FELINE GRIMACE SCALE
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© Université de Montréal 2019
なぜ、Feline Grimace Scale ?
疼痛は苦痛、ストレス、不安を引き起こします。
動物の痛みをできる限り阻止・治療し、苦痛を最小限に抑えるためにあらゆる努力を払う必要があります。
痛みの管理には疼痛評価と治療が含まれます。
我々の研究室は、猫の福祉に従事しており、小動物の
疼痛管理に関する科学的なエビデンスを数多く
報告しています。
痛みをより良く治療するためには、まずは痛みを認識する必要があります。哺乳類では、痛みの評価は表情の変化等、痛みが引き起こす行動の変化を特定することによって行なわれています。
Grimace Scale は表情の変化をもとにして動物の痛みを測定する方法で、様々な動物種で開発されてきました。我々の研究室では、猫の疼痛管理を向上させるため、
モントリオール大学内の研究者達と協力してFeline Grimace Scale の開発と検証を行なってきました。
開発
Feline Grimace Scaleはモントリオール大学附属教育動物病院 (CHUV - Centre hospitalier universitaire vétérinaire, Université de Montréal) に来院した疼痛を持つ猫と健常猫のビデオを用いて開発されました。疼痛の有無を評価し、もしも疼痛が確認された場合には鎮痛剤 (痛み止め) が投与されました。実験は猫の飼い主の参加同意を得た上で実施されました。猫の管理と治療は猫に優しい手法を用いて実施され、猫に痛みを与えるような手技や害になるような手技は行なわれないよう注意が施されました。
痛みのある猫とない猫の画像を比較し、5つの特徴がこれらの猫の間で異なることが確認されました。
アクションユニットと呼ばれる、これらの特徴には以下のものが挙げられます:
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耳の位置
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目の開き具合
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マズルの緊張度
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ヒゲの位置
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頭の位置
検証
スケールが有効であると言われる場合、Feline Grimace Scale がしっかりとした科学的な方法に則って以下の点を確認したことを意味しています。
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スケールが意図しているものを測定している: この場合は ”痛み”
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異なる観測者間で繰り返しが可能 (異なる観測者間で同じようなスコアを得られる、または異なる観測者間で同様の変化を”見る”ことができる)
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時間が経っても繰り返し測定が可能 (例えば、ある観測者によって今日得られた値が、来月測定される値と同じような値である)
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異なる状況を区別することができる (痛みを持つ猫と持たない猫、または痛み止めを投与する前と後)
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既存のゴールドスタンダードの方法と相関関係にある(同じ目的で使用されている、検証済のペインスケールと同じようなスコアを得ることができる)
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鎮痛剤治療による反応を見つけることができる
Feline Grimace Scale は素早く、かつ簡単に実施でき、有効性が検証された、信頼できるスケールであることが確認されました。
Feline Grimace Scale を使う
猫に何もせずに30秒間観察し、スコアをつけます。もし猫が毛繕いや摂食をしていたり、鳴いている場合には、
それらの行動が終わるまで待ってからスコアをつけます。もし猫が眠っている場合には、起きるまで待ってから
スコアをつけます。
それぞれのアクションユニットは個々に測定し、0 点 (アクションユニットは認められない)、1 点 (アクションユニットは中程度に認められる、または、あるかどうか不確か) または2点 (アクションユニットが明らかに認めらえる) の
点数をつけます。それぞれのアクションユニットの0、1、2点の例については、下記を参照してください。
痛みなし、または軽度の痛み
0 = アクションユニットは認められない
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耳が前を向いている
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目が開いている
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マズルがリラックスしている (丸型)
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ヒゲが緩んで湾曲している
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頭が肩のラインより上に位置 している
軽度から中等度の痛み
1 = アクションユニットは中等度に認められる、または、
あるかどうか不確か
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耳同士が少し離れている
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目が部分的に開いている
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マズルが軽度に緊張している
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ヒゲが僅かに湾曲している、 または真っ直ぐである
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頭が肩のラインに位置している
中等度から重度の痛み
2 = アクションユニットが
明らかに認められる
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耳が寝ている、または外側を向いている
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目が閉じている
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マズルが緊張している (楕円形)
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ヒゲが真っ直ぐで正面を向いている
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頭が肩のラインより下に位置している、または下方に傾いている
スコアの解釈
高い数値であればあるほど痛みが強いことが示唆されます。Feline Grimace Scale は、獣医師が鎮痛剤を投与すべきか決定する手助けをしてくれます。
Feline Grimace Scale は5つのアクションユニットから構成されていて、それぞれのアクションユニットが0~2点のスコアを付けられることになります。したがって、考えうる最大のスコアは10点となります。”カットオフ”値 (4点以上) であった場合、獣医師は症例の身体状態やそれまでに投与された他の薬剤との兼ね合いを考慮した上で、鎮痛剤の投与を考慮する必要があります。
スコアが4点以上であるものの、さらなる鎮痛剤の投与が必要であるか不確かである場合には10~15分後に再度評価する必要があります。